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年をとって熟睡できなくなったとお困りではありませんか?
高齢者の睡眠障害について
ご高齢の患者さんで、睡眠薬を常用されている方が多いようです。
年齢と共に、若いころのように熟睡できなくなってくるのはどうしようもありません。
厳しいようですが、まずそれをしっかり納得するのが、大切です。出来もしないことを追い求めて、薬に頼ったりすることを見直してみましょう。
そのうえで、眠りの質をよくする為に眠るまでの生活習慣をもう一度見直してみれば、結果がだいぶ違ってくるのではと思います。また、睡眠薬自体も減らしたりできる可能性も出てきます。
まず年をとると睡眠の質が変わってきます。次をご覧下さい。
高齢者の睡眠の特徴
ポリソムノグラフィーという、睡眠中の脳波、呼吸運動、
血中酸素分圧などを測定する機械で測った結果です。
- 総睡眠時間
総睡眠時間は、10年で10分ぐらい減ってきます。70歳では、20歳より50分減ってきます。
- 入眠後の覚醒時間
いったん眠っても、何かのきっかけで目がさめてまたねむったりしますが、あるいは、脳波上での覚醒であり実際には目を開けていない場合も含めて、睡眠の途中で目が覚める時間が増加します。やはり10年で10分ぐらいです。20代に比べ、70代では、寝ている時間のうち50分ぐらい寝ていない時間が増えます。当然熟睡感は、悪くなります。
- 入眠潜時
床に就いてから眠り込むまでの時間は、長くなります。ただし、60年で10分ぐらいとあまり大きな差はありません。
- 深睡眠
直線的に低下。深睡眠とは、深く眠った状態で外界からの刺激にも反応しにくくなっています。脳の休息に当たる時間です。これが低下するので、いわゆる、ぐっすり眠ったという感じが減ってきます。10年で2%ですから、70歳では、20歳より約10%低下します。
つまり、20台に比べ、70代では、寝る時間自体が50分減ります。寝ていても目が覚めた状態になるのが(脳波上の覚醒だけも含めて)50分増えます。深い眠りが10%少なくなります。実質約2時間睡眠が減った状態です。しかも、深睡眠が減るため、熟睡感が減少します。
若いころのようにぐっすり眠れないのは仕方のないことと、このデータを見てまず納得することが大切です。
若いころのように長く、ぐっすり眠ることを求めてしまうと、寝ても充足感が得られず、眠れないままベッドで苦しむため、不眠に対する恐怖感を募らせ、結局不眠が悪化してしまいます。
次に、12ヵ条の睡眠障害の対策があるので、ご紹介します。
(睡眠障害の対応と治療のガイドラインより)
睡眠障害対策 12の指針
- 睡眠時間は人それぞれ。日中の眠気で困らなければ十分。
睡眠の長い人、短い人、季節でも変化。8時間にこだわらない。
歳をとると必要な睡眠時間は短くなる。
- 刺激物を避け、眠る前には自分なりのリラックス法。
就床前4時間以内のカフェイン摂取と就床前1時間以内の喫煙は避ける。
軽い読書、音楽、ぬるめの入浴、香り、筋弛緩トレーニング。
- 眠たくなってから床に就く。起床時刻にこだわりすぎない。
眠ろうとする意気込みが頭をさえさせ寝つきを悪くする。
- 同じ時刻に毎日起床。
早寝早起きでなく、早起きが早寝に通じる。
日曜に遅くまで床で過ごすと、月曜の朝がつらくなる。
- 光の利用でよい睡眠。
目が覚めたら日光を取り入れ、体内時計をスイッチオン。
夜は明るすぎない照明を。
- 規則正しい三度の食事、規則的な運動習慣。
朝食は心と体の目覚めに重要。夜食はごく軽く。
運動習慣は熟睡を促進。
- 昼寝をするなら、15時前の20~30分。
長い昼寝は、かえってぼんやりのもと。
夕方以降の昼寝は夜の睡眠に影響。
- 眠りが浅いときは、むしろ積極的に遅寝・早起きに。
寝床で長く過ごしすぎると熟睡感が減る。
- 睡眠中の激しいイビキ・呼吸停止や足のぴくつき・むずむず感は要注意。
背景に睡眠の病気。専門治療が必要。
- 十分眠っても日中の眠気が強い時は専門医に。
長時間眠っても日中の眠気で仕事・学業に支障がある場合は、専門医に相談。
車の運転に注意。
- 睡眠薬代わりの寝酒は、不眠のもと。
睡眠薬代わりの寝酒は、深い睡眠を減らし、夜中に目覚める原因となる。
- 睡眠薬は医師の指示で正しく使えば安全。
一定時刻に服用し就床。アルコールとの併用をしない。
この12ヵ条のうち6番の運動をされると体調維持によいようです。もちろんやりすぎは、いけませんが。生活習慣を見直して、できるだけ睡眠薬をつかわなくしていきましょう。睡眠薬の連用による、眠気、転倒あるいは、中毒症状などを予防しましょう。
また、9,10番は睡眠時無呼吸症候群と関連疾患の症状です。特に、睡眠時の呼吸停止は、高血圧や心臓病などになる要因です。また、むずむず脚症候群といって睡眠中に足がむずむずして勝手に動くのは、レヴィ小体型認知症(幻覚、妄想、パーキンソン病様の運動障害を伴う認知症)を合併しやすいので要注意です。
その他に、慢性閉塞性肺疾患を持っている人は、夜間の酸素濃度の低下が激しくなるので要注意です。
睡眠時無呼吸症候群の原因として、肥満、鼻閉、扁桃肥大、飲酒による咽頭筋の弛緩などがありますが、内視鏡下に鼻から咽頭喉頭までの精査が必要です。いつでもご相談下さい。