11/26に岐阜で開かれた、第74回日本めまい平衡医学会に行ってきました。
前日に午後診終了後、JRで岐阜に11時過ぎに入りホテル泊。当日は、朝から会場の国際会議場と隣接する都ホテルにて、一日たっぷり、最新の情報を収集してきました。
いろいろありましたが、今回はテレビにも良く出演されている横浜市立みなと赤十字病院耳鼻咽喉科部長の新井基洋先生のめまいのリハビリの講演のお話をご紹介します。
新井先生は、めまいのリハビリの大家で、重症者に対する入院リハビリ指導や、外来でめまいの患者さんの集団でのリハビリをなさっています。
めまいにリハビリは効くのか?という疑問を持たれる方も多いと思います。結論から言うと、70-80%以上の人に効きます。全くめまいがしなくなったとはいきませんが、70%位症状が取れることが多いらしいです。たとえば、めまいで全く動けない人が、起きて歩く程度まで回復するという感じです。
特に、ながいあいだ原因のはっきりしないめまいで苦しんでいる方には、有効です。
なぜ、リハビリがきくのか?それは、脳がめまいに対抗してめまいを抑え、日常動作を出来るようにする機能があるからです。中枢性代償と言います。
例えば、フィギュアスケートの選手は、くるくる高速で回転してきれいに着地し、そのあとも平気でいろんな演技をつづけていけます。我々には、考えられない回転に対するなれというか抵抗力です。フィギュアスケートの回転は、必ず左回りです。長年の練習で脳が左回りの回転に抵抗力がつき、目が回らなくなった結果、素晴らしい演技を連発できるようになったのです。ちなみに、このフィギュアスケートの選手を椅子に座らせ、逆回転で回すと、我々一般人と同じように椅子が止まってたちあがろうとしても、たちまち回転と逆方向(左方向)に倒れてしまいます。こんなふうに、ものすごいスピードの回転になれることができる脳の力をめまいの症状を抑えるのに使うのが、めまいのリハビリです。
めまいは、いろいろな原因でおこりますが、急性めまいの原因の約50%は、耳が原因です。特に三半規管の異常によるもの(良性発作性頭位めまい症など、当院のホームページ参照)が圧倒的に多いのです。脳は悪くないので、脳のめまい抑制作用が効きやすいのです。もちろん自律神経の不調によるめまいなどにも効果はあります。
新井式めまいのリハビリは、24通りあります。
特に重要なものとして、下の2つがあります。
1. 右手を伸ばし親指をたてて、親指の爪をずっとみながら、首を左右に30°ずつ振る。
速く20回。
2. 右手を伸ばし親指をたてて、親指の爪をずっとみながら、首を上下に30°ずつ振る。
速く20回。
1.は、首を回して、振り向いたらめまいがした。2.は、靴をはくのに下をむいて、首を上げたらめまいがする。といった場合に有効です。
その他にも、めまいのする状況に対応したリハビリがあります。(立ち上がったら、めまいがするなど。)
その他、高齢者のめまいの注意点として、
1. めまいがこわくて寝たきりになると、筋力低下が進行していよいよ立ったり歩いたり出来なくなる。積極的に、めまいが楽になった段階で歩くようにする。
2. また、元々筋力低下があるので、めまい対策以外に足腰の筋力を付けるような整形外科的リハビリが必要。
当院では、頭位治療と言って、良性発作性頭位めまい症の原因を治す治療を主に行っていますが、もちろんその治療が効果を現すまでにリハビリをするのは、よいことだと思います。但し、いまグルグル目が回っている人は、無理です。ある程度治まってからして下さい。めまいの症状により、リハビリをご指導させていただきますので、めまいの方は、一度受診なさっては、いかがでしょうか。