アレルギー性鼻炎は、空中の抗原を吸い込むことによって、鼻粘膜の抗体が反応しくしゃみ、鼻水、鼻づまりを生じるアレルギー反応です。よくある抗原として、スギ、ヒノキ、ダニ(いわゆるハウスダスト)などがあります。
この抗原を舌下部の口の粘膜から吸収させることによって徐々に体を慣らしていき、アレルギー反応を起こさなくなるようにするのが『舌下免疫療法』です。理論的には、制御性T細胞を誘導することで、抗体産生をストップさせます。舌下部というのは、舌の下面と歯茎の間の平らな部分です。
現在、スギとダニに対し治療できます。
ただし、3年ぐらいかかります。(2年では治療効果が長持ちしないようです。)5歳から治療可能です。治療効果が出始めるのに最低3か月はかかります。
毎月1回受診してもらい、アレルギーの状態をチェックします。
くすり代は、スギが、毎月1,000円ぐらい、ダニが2,000円ぐらいです。
治療に伴う副作用として、くすりを垂らしたり、錠剤を置いたりする舌下部の腫れが一番多いです。その他、かゆみ、せき、薬の通過経路である食道や胃の痛みがあります。
これらの副作用は、多くは数週間ぐらいで無くなります。治療を考えておられる方には、それぞれの薬のパンフレットを読んでいただき、細かい点まで知っていただいています。
当院の治療実績をご紹介します。
2019年1月~2022年5月の期間に当院で1年以上舌下免疫療法を受けられた方は、全部で153名です。スギの舌下免疫療法のみを受けられた方は49名、ダニの舌下免疫療法のみを受けられた方は53名、スギとダニ両方の舌下免疫療法を受けられた方は51名です。
「治癒」は、まったく症状がなくなり薬も不要になった場合です。「かなり有効」とは、症状がかなり良くなり、薬の量が減った場合です。「やや有効」とは、症状は軽くなったが薬の量が減らない場合を指します。「無効」は、まったく治療効果がなかった場合です。
今回のデータでは、「治癒」が67名67%で極めて優秀な成績です。しかもそのうち約40%に当たる26名は舌下免疫療法を開始した次のシーズンから薬も不要になり、治癒したと同じ状態になりました。「やや有効」と「かなり有効」のグループのうち7名は、スギ以外の花粉アレルギーがあるため、薬を中止できない方でした。スギの時期の症状はかなり改善されていました。
平均治療期間は2年4か月、平均年齢は30.9歳ですが、20歳未満が38名と約40%が若い方でした。
「治癒」は51名49%、「かなり有効」は34名32.7%、併せて85名81.7%とかなり有効率が高かったです。
平均治療期間は2年3か月、平均年齢は25.8歳、19歳までが53名51%が若い方でした。
「かなり有効」の34名の内7名が他のアレルギーがあるため、薬を中止できない方でした。実際には、ダニアレルギーの症状としては、治癒に近い方も混じっています。特に鼻閉感の改善が良かった方や絶えず鼻水が流れるのがほぼ止まった方は、効果を実感されています。
スギもダニもこのように有効率が高いので、治療期間が約3年程度かかるのはちょっと大変ですが、それ以後楽になることを思えば、我慢できるのではないでしょうか。